Interview

絵を描くことは感情をぶつけることだった|感動から変わった絵への向き合い方

感情を表現することから、絵を描くことが始まったふたづきさん。元々は興味がなく、学生時代の美術の授業以降、縁がなかった絵画の世界。社会人になってから精力的に描くようになった、そのキッカケとは。

絵を描くことに対する想いや、どのような出会いの中で今の作風に至るのか、ふたづきさんにお話を伺いました。

感情を表現する手段として選んだことが始まり

ー絵に興味を持ち始めたきっかけは何だったのでしょうか?

以前、心理カウンセラーをやっていまして。その時、勉強のために行っていたカウンセラー同士のワークが終わった後に、文字でも造形でも何でも構わないから、「自分の今の感情を表現してみなさい」という課題があったんです。

そこで絵を描くことを選んだら、カウンセラーの間で評判が良かったので、興味を持ち始めました。ただ元々、小中学校の美術の時間に描くぐらいしかしたことがなくて、そこからカウンセラーになるまでは絵への興味もそんなになかったし、描いていませんでした。

もう一つは、カウンセリングをしている時に、精神的に傷を受けてしまった方の絵を見ることがあったのですが、本当に迫力があって。凄まじい色使いや構図、それから静寂の中の緊迫感、不安定さなどをすごく感じて、「絵ってすごいな」と思ったきっかけになりましたね。

ーまさに感情が表現された絵だったんですね。

そうですね。私自身も、諸事情でカウンセラーを辞めた後、身の回りの対人関係や環境で悩む時期があったんですよ。それが結構長く続いて、この苦しい気持ちを何とか吐き出したいっていう欲求に駆り立てられた時、絵だったら表現できるんじゃないか、と。

その時、家から小一時間のところに絵画教室を見つけたので、そのまま入会したのが描き始めたきっかけです。

ー表現する手段がたくさんあった中で、絵を選ばれたのは何故でしょうか?

もう単純に、簡単だろうなと思ったからですね。笑
文章を書くなら文章力が必要になるだろうし、作るとなると手先の器用さが必要なんじゃないか、などと色々考えて、だったらマジック1本で描ける絵にしようと思いました。

絵を知らないからこその自由な表現

ー実際描かれてみてどうでしたか?

描き始めとしては感情表現がきっかけで、感情をぶつけることから始まったので、絵を「作品」としては見ていなかったです。1枚の絵を作品として完成させる、という意識はまるでなくて、とにかく「今これだけ苦しいんだ」ということを叩きつけていくて。

絵画教室も、技術は特に教えませんっていう先生方で、老若男女集まって自由に、もう好きなものを好きなように描いていて。無知って恐ろしいですよね、絵の具を投げつけたり、垂らしたり、それこそフォークやナイフで削ったりしながら表現していました。

絵画教室初期作品

ーいつ頃からアートを意識して描かれるようになったんでしょうか?

やっぱり絵を描いていると少しずつ心理的に落ち着いてきて、「今の感情が、今この描いている絵からちゃんと出ているんだろうか」っていうところに集中するようになったんです。多分そこから、アートとして見るようになったんじゃないかなと思います。そこも踏まえて、いろんな技法は今の感情を表す手段でしかないなと。

ーその中で油絵を選ばれた理由というのは?

最初に一式揃えていただいたのが油絵の具だったからと、何も知らなかったので、絵といえば油絵でしょう、っていうのだけで始めました。

でも、やっぱり油と油が混ざり合って深い色合いになるっていうのが醍醐味で。感情を表現するには1番ぴったりですし、重ね塗りもしやすいので表現しやすいですね。

モノに宿るエネルギーを表現したい

ー感情を表す絵を描く上で、大切にされていることは何ですか?

自分の心の中にあるテーマは、エネルギーとか波動なんですよね。ただ一つの物体にもエネルギーがあって、それとどう関わるのかという部分をベースに、絵を描きたいと思っています。

あとは、歴史の重みを表現したいですね。今生きている中でも常に歴史と隣り合わせの存在なのだと思うので、古代のものもずっと継承されているっていうのを描きたい気持ちはあります。

作品名:春の音たま

オイルという作品は、働く人をテーマにしていて。よく社会の歯車、なんて言いますけど、色々な仕事をしていて、歯車の一人であっても、輝かしい歯車であるっていう意味合いでゴールドにしました。

あとは束の間の休息で花を差し上げたいなという気持ちから、背景のお花を描いています。それで、馴染むというか、潤滑油という意味合いで「オイル」とタイトルをつけました。

作品名:オイル

ーご自身の中でかなりこだわりだったり、世界観というのは固まっていらっしゃるんですね。

そうですね、逆に人はあまり描かないです。人は十人十色なので、描いていると様々な感情が湧き上がってしまって1つの絵に集約できないんです。いろんな面があって、あれも出したいこれも出したい、ってまとまらなくて。自分の感情がそのまま出せないってなると、描いていてもあやふやになってしまうので、描く機会は少なくなります。

一つの作品には一つの感情をのせることが多くて。割と普遍的なものを描きたいなとは思うんですけど、大きくなりすぎて、まとまりが無くなってしまうので、今回はこれ、今回はこれというように分けて描こうと思っています。

ポップな絵とかも好きで描きたいなと思うんですけど、どうしても感情を背負ってしまうので、オラオラー!っていう、感情をキャンバスにぶつけたようなものしか描けなくて。描く表現のタイプってあるんでしょうね。笑

きっかけは感動から

ー絵を描いていて良かったなと思う場面はありましたか?

環境とか経験からインスピレーションを受けた、その人独自の作品に出会えて感動した時ですね。なかなか感動できる出来事に出会えるタイミングってないと思うんです。その人の独自の絵を見て、共鳴・共振した時に得られる感動で、絵を描いていて良かったなって思います。

ー感動したことから、何か転換期になったことはありますか?

デタラメに絵を描いていた時に「欲しい」と言ってくださった方がいらっしゃったんです。必死になって働いたお金で人の絵を買うって、ものすごい責任感と感動を覚えたんですよね。そこから、うやむやには描けないって思いましたし、絵に対する向き合い方がちょっと変わったきっかけにもなったと思います。

多角的な角度から見た絵を描いてみたい

ー感情を描くとなると、気持ちの切り替えって大変ではないですか?

大変です。絵に入るとどっぷり浸かっちゃうし、でも疲れすぎると良くなかったり、そこから引き離して客観的に見るようにしないと構図が狂ったり。切り替えが難しいですよね。

描こうとしている感情って一つなので、それがなかなか表せないと、ものすごく精神的にも苦痛で。試行錯誤しながら進めるような、時間との戦いになります。

ー絵を描く・描き終わるのスイッチの切り替えは何でされてますか?

家庭があるのでそれで切り替えるんですが、一人でいる時だったら、お腹が空きすぎてとか、眠すぎてどうしようもないっていう時が切り替え時ですね。

ー今後挑戦してみたいことがあれば是非教えてください。

正面からだけではなく、上からとか45度下からとか、そういう角度のついた絵を描きたいなと思っています。角度がつくと、自然と動きも出てくるような感じになるんです。

デジタルアートでも、多角的な角度から描かれているものを見ると想像力が湧き上がってくるんです。なので、自分もそういう絵を描いてみたいなと思っています。

ふたづき

ふたづき

心理カウンセラーとしてのキャリアを経て、絵を描くことを通じて感情表現を行うことで、絵画の魅力を見出す。自身の感動体験から、本格的にアーティストとしての活動を開始。 宇宙や動物、古代から引き継がれている歴史的なもの等をモチーフに、そのものが持つエネルギーを油絵で表現することを得意とする。

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