Interview

心のままに描いていく|人生やりたいことをやり切りたい

アクリル絵の具で、海をモチーフにした作品を中心に描く古 散太さん。様々な海の表情を描かれています。どのようなこだわりや想いで描かれているのか。古 散太さんにお話を伺いました。

移住をきっかけに気づいた魅力

ー絵を描き始められたきっかけを教えてください。

海を好きになった繋がりで「ハワイカルチャー」にハマったのがきっかけですね。

以前は三重県に住んでいたんですが、20年ほど前に奥さんの希望で北海道へ移住したんですよ。移住するまでは、植木屋に勤めるくらい山や森が好きだったんですけど、八雲というところの海を見に行った時、(三重県の)伊勢湾とは全然違った海の姿に感動して。「海良いじゃん!」というので、ハワイに興味を持つようになりました。

それに関連して、サーフィン系のカルチャーとか、「アイランドレゲエ」というジャンルの音楽に夢中になったんですよね。そこから「どうにか自分もハワイカルチャーに参画できる方法はないかな」と考えたのが始まりです。だから、海の絵ばっかり描いてしまいます。

作品名:surf 12

ーハワイカルチャーに参画する方法として「絵」を選ばれたのはなぜですか?

元々バンドをやっていたり、一人で楽曲を作っていたりもしていたんですけど、音楽に執着しすぎて自律神経失調症になってしまったんですよね。それで音楽を辞めたあと、愛犬が亡くなったことでペットロス状態にもなって。自分は常に何かしていないとダメな人なので、「何かしたいな」と思った時に「絵を描こう」となりました。

絵を見ること自体は子供の頃から好きで、新聞にあった山水画の広告を切り抜いて見るみたいなこともしていたんですが、本格的に描き始めたのは北海道に移住してからですね。

ーすごく環境が変わったタイミングだったんですね。

そうですね。自分の人生を振り返ると本当に分岐点が多くて、それこそ「音楽やってなければ」「北海道に来てなければ」「海を好きにならなければ」ということがすごく多くて。色んな分岐点を経て、今ここに至るという感じですね。

最終的には「ハワイに関わりたい」が一番で、できれば住みたいんですけど、北海道の暮らしを気に入っているのでちょっと悩んでいます。ハワイもまだ行ったことないんですけどね(笑)。サーフカルチャーって日本にもあるので、今はそこに食い込めないかなと。

実は小説も書いてるので、絵じゃなくても小説でもなんでも、自分が表現したもので「古 散太」という名前が知れて、そこからサーフカルチャーに関わりたいなと思っています。

「自分の絵」である証の水玉

ー水玉を常に描かれているのはどういった経緯からでしょうか。

最初に水玉を描こうとしたのは、ひらめきでしたね。ただ本当に思いついただけなんですけど。30歳手前で絵をちょっと描き始めた時は、「並べるの面白いな」という感じで、ただただ丸を並べたかっただけでした。

当時は色鉛筆で描いていたんですが、その作品制作が心地よかったというか。出来上がりも気持ち良かったので、その延長線上で描いている感じですね。

あとは、「自分の絵ですよ」っていうサインのつもりでも描いています。鈴木英人というイラストレーターの方がいらっしゃるんですが、紙吹雪みたいなものをわざと絵に描いているのが特徴で。それを見て、自分も「これが自分の絵だ」と分かるサインとして、「玉の数は7つ」と決めて、光や風をイメージして描くようになりました。

鈴木さんの絵の影響もすごく大きいので、真似はしないように、でも尊敬の念や大好きだというメッセージは込めて描いています。

元々くっきりした絵を描きたかったんですが、好きなアーティストの影響を受けている分、ちょっと真似しているように見えてしまうんですよね。なので、それを避けるためにグラデーションで描いています。

作品名:sunset melody #79

ー他に影響を受けているアーティストはいらっしゃるのでしょうか。

ヘザーブラウンとか、アンディ・デイビスとか、そういうサーフアーティストの方たちが最終的にはきっかけになりました。それまでも、キース・ヘリングやアンディ・ウォーホル、フランク・ステラといったポップアートの方たちの絵が大好きで、美術館でずっと観続けていたり、画集を買ったりしていました。

日本の方だと歌川国芳とかが好きで、展示会があれば頻繁に観に行っていました。昔はそういう方たちの影響で、ちょっと「反骨心やふざけた感じをポップに仕上げたい」みたいなのはあったかもしれないです。

美術館とかに行くようになったのは、高校生とかそこそこ大人になってからですね。愛知県美術館ができたのが大きいと思います。自分が好きなポップアートとかの展示も多かったので、よく通っていました。

あとは、うちの父親が時々、短冊を買ってきて下手なりに墨で絵を描いていたのを見ていたので、その影響も受けているかもしれないですね。当時、自分でも描いてみようとちょっと思った時期もあったので。

オリジナルにこだわった制作過程

ー水玉をサイン代わりに描く以外に、絵を描く時のこだわりはありますか?

絵を描くとき、「パレットの上で色を混ぜる」というのはしないですね。全部ボードの上で絵の具を直接塗って、その上から何重にも重ねて色を出すので、何色とも言えない色が出るようになりました。

『sunset melody』シリーズも、実は全部昼間の絵から始まるんですよ。青空で、海も水色や薄いグリーンとかを先に塗って、それから夕方にしていくんです。多分水彩絵の具の追加方で描いているんだと思います。色を透かしていくというか。

制作途中の『sunset melody』シリーズ

制作中は、実際にこのボードの中で昼間からちゃんと時間経過があるんですよね。だから、どの時間帯で止めるかは描きながら途中で決めています。昼間から夕方ならちょっと黄色味が強くて、そこからだんだんオレンジ色になっていって。今度は上の方から紫とか濃い青がかぶってくる感じを、調整していく流れです。

ーボードの上でも時間が経過するって素敵ですね。

まぁこだわってるというか、必要に迫られてというか(笑)。海の絵が上手い方ってたくさんいるので、ただ上手く描いてもしょうがないし、かといって単純化すると、プロのアーティストを真似することになるというので、辿りついたのがここですね。

下書きは何本か線を引くだけで、あとは作品を見ながら加減をするので、気分で描く感じですね。ヤシの木も最後に描くんですが、下書きはしないので、「これぐらい葉っぱが出てた方が良い」とか「根本から見えてた方がいい」っていうのも、気分で描き進めています。

あとはコンスタントに描くことですかね。よっぽど忙しくない限りは、最低でも月に1作品は完成させたいと思っています。

あとは、「海を描き続ける」というのもこだわりですね。さっきの話もそうですが、なるべく人の描かないものを目指していくというのは意識しています。

ー今後挑戦してみたいことはありますか?

「Greenroom Festival」っていう、横浜の方でやっているサーフのフェスティバルがあるんですよね。サーフ系のアーティストやミュージシャンも集まる大きなイベントで、そこに自分もブースを出したいなと思っています。

「Greenroom Festival」自体世界のあちこちで実施されているので、できればハワイやオーストラリアの方に出たいんですけどね。せめて日本で実施されているイベントだけでも、自分の名前のブースに作品を並べられたらさぞかし気分が良いだろうなと。なので、目標というか、その機会をずっと狙っています。

それから海外での活動に目を向けようかなと。ギターもベースもそこそこできるので、どこかで知り合いを作って飛び入りでライブ参加もしたいなと思っています。

昔から夢は大きく持っているんですよね(笑)。自分にとって1番必要だなと思うのは、やっぱり未来に託せる何かとか、目指せるものなのかなと思っています。

残りの人生も折り返しをすぎているので、やりたいことをやっていたいなと思っています。

古 散太

古 散太

北海道への移住をきっかけに、サーフカルチャーへ興味を持ち始める。「自分だけの絵」を描くため、様々な表現方法を用いて制作。「サーフカルチャーに参画する」という夢を実現するべく、創作活動を続けている。

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