Interview

たくさん想像を巡らせながら描いていく|一目で心を動かしたい

パステル画で優しく癒される作品を描くふみるさん。日常の美しい場面を、様々な表情で描かれています。どのような想いやこだわりから今に至るのか。ふみるさんにお話を伺いました。

イラスト教室から始まったパステル画

ー絵を描き始められたきっかけを教えてください。

子供の頃から絵を描くことは好きで、友人との交換日記で絵を描いたり、漫画を描いたりしていたので、学校でも「絵が好きな人」というイメージを持たれていました。文集とかの表紙を頼まれることもあったので、そういうのには携わっていましたね。

絵に関する学校への進学はしなかったものの、絵を描き続けていたい気持ち自体はずっとあったので、社会人になってからも絵は描いていました。ただ、やっぱり「思うような絵を描けないな」ともどかしく思うことがあって。基本が大事なのではと思い、一から学ぶために週に一度デッサン教室に通い始めました。

その後、油絵の具で色を使いながら絵を描きたいと思ったので、今度は油絵教室に入って。こちらの教室では、一般的に想像されるような絵画を学んでいたので、人物や風景を見ながら描いて練習する、という時間でしたね。そういう時間を経て、自分が何を描きたいのかを見つけていきました。

ーパステル画を描き始めたきっかけは何だったのでしょうか?

イラスト教室の案内チラシに載っていたパステル画ですね。そのチラシを見た時、「こんなに可愛いものがあるんだ」という初めての発見があったと同時に、「こういう絵を描きたい」と思い、その教室へ通うことを決めました。

油絵を学んだものの、油絵はなかなか乾かず大変で、週末に「ちょっと描こう」というときには不向きだったので、乾きの早いアクリル絵の具とイラストボード、あとはイラストの本や雑誌を買って、それを見ながら、自分なりにアクリルで可愛いイラストを描いていたんですよね。

そんな時にイラスト教室のチラシに出会って、パステル画を知って、今の画風に繋がっています。元々、身内が画材関係の仕事をしていた繋がりでパステル自体は持っていたんですが、使い方が分からないので、しまい込んでしまっていて。イラスト教室で使い方を教えてもらえたので、そこでようやく「やってみよう」と、使うようになりました。塗り方も特殊ですし、最後の仕上げ用に定着液があるとか、ちゃんとマスキングすれば白い部分を残せるとか、そういったことも教えてもらいました。

イラスト教室は半年間の期間限定だったのと、卒業のタイミングで自身の引っ越しなどが重なったのもあって、その後は特に他の教室には通わず、自分で自由に描きたい絵を描いています。

ー今はアクリル絵の具は使われないのですか?
今までは描いていなかったですね。パステルがすごく手軽で、思い立った時にすぐ描けるのが都合良くて。色んな用事をこなしながら、描きかけの作品を遠目で見て「やっぱりここはこうした方が良いかな」と思ったらすぐに制作スペースに戻って、みたいなことをしています。

ただ、食わず嫌いもいけないと思い直し、最近アクリル絵の具にも少しずつ挑戦し始めました。

様々な見え方を想像して描く

ー影響を受けているアーティストはいますか?
パステルといえば、な人ですが、『ごんぎつね』とかを描かれている黒井健さんや、『猫のダヤン』を描かれている池田あきこさんですね。本当に細かいですし、世界観の作り込みがすごくて、そこまで表現できるのがすごいなと思っています。

イラストの雑誌を見たり、その方たちが出版されている絵本を買ってみたり、そういうことはよくしていましたね。憧れの人がいると「こういうの描きたいな」と思いますし、研鑽しないといけないな、とも。

ー憧れは活力になりますよね。描かれている作品に登場するキャラクターは、どのように生まれたのでしょうか?
最初は、物語の1ページみたいな塗り込んだ絵を描きたいなと思ったんですよね。それから、じゃあ「そういう絵に合うキャラクターってどんなのだろう」と考えてみた結果、今描いているキャラクターが誕生しました。

日常の中で、例えば散歩をしていて「綺麗だな」「可愛いな」と思ったものに触れた時に、「こういうのを描いてみたいな」って想像するんですよね。そこにキャラクターを取り入れて、楽しそうに遊ばせたいなとか考えながら描きます。綺麗なものの中に入れて表現したいと思うので、風景などからイメージを膨らませて、そこにキャラクターを登場させる感じです。

自然とかに触れるのが好きなので、そういったものからインスピレーションを受けています。朝起きて歩いていたら霜が降りていたとか、そこに葉っぱが一枚落ちているだけとか、本当に些細なことでも制作のきっかけになっていますね。

あとは、自分が見て感じたものを自分自身で表現したい、と思って描いている部分もあるかなと。表現しきれているかどうかは分からないですが、写真ではなかなか出せない、私の世界を描けたらなと。

絵を描く時は、たくさん想像を巡らせて描いているんですよね。日常の風景や同じ花でも、その時の心情や状況によって見え方が変わると思っていて。例えば桜でも、楽しく見えることもあるし、別れの季節にも咲くので寂しい気持ちから儚く見えることもある、とか。そういう風に思って見るとまた表情が変わるので、それぞれ色んな表現で描いてみたいなと思っています。

素直に伝わる感動を届けたい

ー絵を描くときのこだわりをぜひ教えてください。
イラスト教室で教わったことなんですが、「絵の中に一つ見せ場を作らなきゃいけない」ということですね。なかなか実践できないんですが、多分「この絵の中ではこれが見せたい」というものを作るように意識した方が良い、みたいなことだと思っています。毎回描いている時に思い出すんですが、難しいですね。

あとは、「ぱっと見てぱっと感動できる」作品作りを心がけています。説明している感じにならないように、伝えたいことが一目で伝わって、あれこれ考えずに心を動かせる作品が描けたら良いなと。

作品名:灯

イラスト教室に通っていた時、グループ展に参加する機会をいただいたんですよ。当時自分でも恥ずかしいような絵しか描けていなかったし、メンバーにはプロとして活動されている方もいらっしゃったんですけど、参加することに意義があると思って参加して。

そしたら、たまたまご来場されたご家族のお子さんが私の絵を気に入ってくださって、「欲しい」と言ってくださったんですよね。その時に、全然技術不足だとしても、その方の心に響いて、その方のお気に入りの一枚になったというのがすごく嬉しいことだなと実感して。

アクリルで絵を描いていた時から、友人たちに絵を譲っていたことはあったんですが、本当に見ず知らずの方から欲しいと言っていただけたのは良かったですし、その後も今のような画風で描き続けようと思うきっかけにもなりましたね。

グループ展に出展された作品

ー今後やってみたいことはありますか?
最近は、画風をちょっと変えようかなと思っています。アクリル絵の具やオイルパステルとかを使って、もう少し塗り込んだような感じにできないかチャレンジしてみようかなと。

あと、キャラクターが1人だと寂しいので、新キャラクターを考えたり、もうちょっと色を使いこなせるようになりたかったり、というのはあります。

新しいものへの挑戦だと、やっぱり「思い通りに描けるかな」という不安はあるんですけど、やってみないと分からないと思うので。絵と自分を切り離すときっと寂しくなるので、ほそぼそだとは思いますが、ずっと絵を描き続けていくと思います。

ふみる

ふみる

幼少期から絵を描くことが好きで、大人になっても絵を描き続けたいと思い、デッサン教室へ通い始める。その後イラスト教室の案内チラシをきっかけに、パステル画の道へ。日常にある感動を表現しながら、自分の世界観を追求し続けている。

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