Interview

絵を通して変わった価値観|クリエイティブな視点から生まれる作品

「絵を見てくれる人に幸せを感じて欲しい」という想いのもと、素の自分を表現し、貫くことをテーマに描く佐藤雄一さん。デジタルアートから、立体的なアートや額縁まで彩られた作品など、その幅は多岐にわたります。

どのような経験を経てアーティストとして活動し、どんなこだわりや想いで描かれているのか。佐藤雄一さんにお話を伺いました。

アーティストとしての始まりはPhotoshop

ー絵を描くようになったきっかけはいつですか?

10代後半頃に、デザイナーを目指してデザインの学校に通っていたことがあって、そこでPhotoshopに出会いました。色は使い放題で、パソコンながら何でもできるのが楽しくて、そこから本格的にデジタルで絵を描くようになりましたね。

当時の自分は完璧主義で、思い通りにいかないと気が済まなかったというのも、デジタル絵画によりのめり込んだ部分かなと思います。

そこから、だんだんアナログへ移行して、デジタルと両方やるようになりました。アナログ中心になったのはここ3〜4年ぐらいですね。

ーアナログでも制作されるようになったのは最近なんですね。

最近ですね。その中で色々な画材を試した結果、今はアクリル絵の具を使用した絵を中心に描いています。乾くのも早いですし、自分にしっくりきたのがアクリル絵の具で、1番使い勝手がいいなと思っています。

上手くいかない時期が転換期に

ーのめり込んでいたデジタルから、アナログへ移行し始めたきっかけというのは?

数年前に、海外へ販売する機会があったんですが、見向きもされなくて。その時に色々考えているうちに考えが変化しましたね。何かが足りないんじゃないか、もっといろんな人に見てもらうには、どういう表現をすればいいのかなと。

ーそこでアナログの良さに気づいたと。

パソコンって便利で、何でもどんな表現でもできますけど、そこにだんだんと物足りなさを感じていったんですよね。逆に、この絵の具のもつ力強さや偶発性の面白さに、その頃から徐々に気づくようになりました。いろんな画材を試してみたり、思い通りにいかない面白さを感じたり、価値観が変わっていったなと。

ー絵を描くことに対する考え方も、変化していったのですか?

そうですね、10代後半ぐらいからずっとやってきて、当時の自分は「すごい技術を使った絵を描けるようになりたい」という思いで制作していました。今は技術をひけらかすよりも、自分自身が心地よくなれる絵を描くようになりましたね。

ー色々な画材を試された中で、アクリル絵の具に落ち着かれたのは、どんな魅力からでしょうか。

単純に扱いやすいというのもありますが、いろんなメディウムを混ぜて画面を盛り上げたり、多彩な質感表現など、様々な表現が可能だからですね。存在感が増すので、すごく魅力的に感じます。
※メディウム:制作の幅を広げる溶剤。多種多様な種類が存在し、下地に使用したり絵の具と混ぜて質感を変えたりすることができる。

ーシリコン樹脂などを使っていらっしゃるのもそこに関係しているんですね。

そうですね、作品によっては大量の絵の具を使うこともあるので、節約的な意味もあるんですが。笑
今はホームセンターとかに売っている、漆喰風の塗装剤を使っていて。モデリングペーストみたいな、盛り上がった感じに出来るいい下地剤を見つけたので、それをベースにアクリル絵の具で着色していく方法が多いですね。
※モデリングペースト:アクリル樹脂100%と大理石の粉末からできたパテ状の下地剤。

 

実際の制作過程

ー作品の題材は様々あると思うんですが、どんなものに影響されているんですか?

元々日本美術が好きだったんですが、色々好みが変わって、今はアメリカのポップアートや抽象表現に興味がありますね。シンプルなテイストで表現されていて、かつ、力強い色使いに惹かれました。

シンプルに表現出来るところも自分にマッチしているなと思います。また好みは変わってくると思いますが。

絵を描く活動から広がる、社会との繋がり

ー絵を描いていて良かったなと実感されたタイミングはありましたか?

自分は結構、自室に引きこもっているタイプの人間なので、あんまり外に出ないんですよね。なので、絵を通じて社会との接点が広がっている部分はいいなと思います。

地元のイベントに出店したり、それをきっかけに仲間や友人ができたり。地元のイベントポスターの作成を任されたりすることもありました。

ー素敵な出会いですね。地域や地元の人との関わり合いを持って生きるのって、昔と違って今は案外難しいですよね。

そうですね、絵を通じて出会いを得られているのは、良いなと思っています。

見てくれる人がポジティブな気持ちになるような作品作り

ーどんな時に制作意欲は湧きますか?

何か作品を見て「ちょっとこの作品すごいな」と思った時は、自分もこういうの描いてみたいな、と思うこともあります。逆に、特に何もしてなくて、ぼーっとしている時にぱっと思いつくことも。インスピレーションを受けるタイミングは色々ですね。

ー活動の中で、こういう作品を届けたい、という想いはありますか?

明るい作品を描きたいと思っていますし、見てくれる人にも明るい気持ちになってほしいです。なので、絵に暗い気持ちは反映させないようにしていますね。

今後も柔軟な考えで色々なものを取り込んでいきたい

ー佐藤さんのお気に入りの作品といえば?

「ドリッピング」という、絵の具を滴らせて描く技法を用いた作品が好評で、お気に入り作品でもあり、個人的にも力を入れています。

偶発性を取り入れた作品なので、どこから絵の具を飛び散らせればいいか、勢い任せの時もありますが、頭の中でシミュレーションもしたりしながら描いています。

作品名:満開

ー力を入れているといえば、佐藤さんの作品は額装までこだわられている印象ですね。

額装も含めて作品だと思っているので、額にも塗装するとか、そこもすごくこだわっていますね。元々、額縁も自分で塗装したら楽しいんじゃないんかと思っていたのもあって。

鉄の質感を表現する塗料があるのですが、こういうのは額縁に使った方が面白いんじゃないかな?っていうのはたくさんあります。

ー最後に、今後挑戦していきたいことはありますか?

大きな目標は特に無いんですが、先ほど言ったドリッピングを用いた作品と、あとは風景画をもっと極めていきたいと思っています。いろんなものに心移りしやすいので、若干作風は変わっていくかもしれませんし、変わらないかもしれません。

アクリル絵の具メインではいくと思いますが、なるべく柔軟な思考で、色々なものを取り込んでいきたいですね。あんまりガチガチに「こういうことはやってはいけない」みたいなルールは課さず、様々なものを作り込んでいけたらと。

とにかく自分自身に正直に、その時描きたいと思った絵を制作していきたいと思っています。

佐藤雄一

佐藤雄一

デザイナーを目指してデザイン学校へ入学後、デジタルアートへ魅力を感じアーティスト活動を開始。その後、アナログ作品の魅力に気づき、様々なメディウムや技法を使用して表現。 額縁まで多様な素材や技法を用い、オリジナルにこだわった立体感のある、シンプルながらも明るい気持ちになれる作品を得意とする。

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